岸一郎の就任の背景にフロントのさまざまな思惑があったこと、マスコミが期待から岸一郎叩きへと変わっていく様子が主に当時の報道記事により綴られる。
そして、世代交代と投手力を中心とした守りの野球を掲げるが「ミスタータイガース」藤村富美男を初めとする選手から次第に孤立し、総スカンを食らってチームが空中分解していく過程が如実に描かれている。
吉田義男、小山正明ら当時を知る関係者の証言も興味深い。
そしてこの騒動が翌年の「藤村排斥事件」の伏線、さらにはその後の球団のお家騒動体質の起点となっていく様を描く筆致はさすが。
村瀬秀信『虎の血――阪神タイガース、謎の老人監督』(集英社、2024年)
この本は面白かったです。
以下感想。
プロ野球経験のない老人岸一郎がいきなり阪神の監督となり、わずか数ヶ月で解任され、その後の足取りも定かではない。
著者は、この一連のミステリアスな騒動が「選手王様主義」というべき気質、電鉄本社の現場介入、派閥抗争、お家騒動などといったその後の阪神球団の悪しき伝統のきっかけとなったと指摘する。
後半ではこの岸一郎の人生についてさまざまな関係者に取材を重ね、大学野球・満洲野球界での華麗なる球歴、阪神への監督就任・解任後の晩年の人生について解き明かす。
そして藤村富美男の川藤への言葉は良くも悪くもこれが阪神だと思った。
阪神ファン&西武ファンです。西鉄ライオンズなど昔のプロ野球も好きです。
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