岸一郎の就任の背景にフロントのさまざまな思惑があったこと、マスコミが期待から岸一郎叩きへと変わっていく様子が主に当時の報道記事により綴られる。
そして、世代交代と投手力を中心とした守りの野球を掲げるが「ミスタータイガース」藤村富美男を初めとする選手から次第に孤立し、総スカンを食らってチームが空中分解していく過程が如実に描かれている。
吉田義男、小山正明ら当時を知る関係者の証言も興味深い。
そしてこの騒動が翌年の「藤村排斥事件」の伏線、さらにはその後の球団のお家騒動体質の起点となっていく様を描く筆致はさすが。